二人ぼっち
第0章 お兄ちゃん

兄に恋をした。
優しく頼りになる五つ上の兄。私を理解してくれる兄。

 そんな兄の名は、高野 健人(たかの・けんと)。
大学4年生で、就職活動に徹している。

 私と兄は、住んでいる所が違う。と言っても、自転車で30分程の距離だ。
兄が「1コールの電話」をしてきた時は、“遊ぼう”の合図。
自転車に急いで乗り、私は会いに行く。

 けれど兄と遊ぶのは楽しくて、嬉しくて、そして… 辛い。
それは私が、兄に失恋をしたからだ。

 私と兄の間には、今でも入ってはいけない領域がある。
自分の好きだという気持ちを、伝えてはいけない。…ある壁を越えてはいけない。

 けれど決して、私と兄は実の兄妹ではない。
元々は赤の他人だったが、一年半程前にインターネットで、健くんと私は出会った。
毎日のようにチャットの世界で話して半年後。私達は初めて直接会う。

 直接会う事が元凶で、色々な感情を知ることを、一年前の私はまだ知らないー―…。
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