お嬢様になりました。
第六話 胸の締めつけ
待ち合わせ場所に着いたが、まだ葵の姿はない。


まだ時間より十五分も早い。


仕事でもこんなに早く着く事は滅多にない。



「すみませんっ」



同じ歳くらいの小柄な女が二人、声を掛けてきた。


顔を向けると二人とも頬を赤く染める。


正直この手の女には慣れている。



「モデルのレイさんですよね!?」

「そうだけど」

「一緒に写真撮ってもらえませんか!?」



赤の他人で、面識のない俺に話しかけてきた勇気は認める。


でもそんなお願いに応じるわけがない。



「ごめん、プライベートだから」

「どうしてもダメですか?」

「うん」



しつこい。


こういう中々引かない女は好きじゃない。


面倒臭いから。



「じゃあ、握手だけでもお願いしますっ!!」



そう言って、二人同時に手を差し出してきた。


手を握る事になんの意味があるのか、サッパリ分からない。


どうしようか考えていると、一台のリムジンが止まるのが見えた。


あれには間違いなく葵が乗っているだろう。



「ごめん、急ぐから」



まだ何か言っている女どもを無視して、リムジンに向かって足を進めた。





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