アネモネ
ただ、想う

「けいすけー、まってよー」

学校までのゆるい坂道をゆっくり登るあたしの前、長い足で先を行く啓介の後ろ姿に投げかける

あたしの声にピタリ、止まった啓介


くるり、振り向いて

「お前は歩くのがおせぇんだよ、そんなペースで歩いてたら遅刻する」

無情の一言

その言葉にあたしはムッとして

「啓介のばかー、もういいもん先に行っちゃえ」

歩くの遅いのだってしょうがないじゃん、これでも精一杯歩いてるのに


啓介のばーかばーか、薄情者


うつむき加減でとぼとぼ歩くあたしの前にふと影が出来た、不思議に思って顔をあげると

「え?」

そこにはさっきまで数メートル前にいた啓介


「おら、さっさと歩けのろま」


そう言ったあたしの腕を掴んで引っ張るように歩き出した啓介の歩く速度は心なしかゆっくりな気がする





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