「ちょっ、やめて……だめだってば……あん」

静寂でなければならない図書館。

平日の昼下がりは、試験期間でもなければ利用者は少ない。

「俺、ビジネス書見てくるから」

あたしが司書を勤める図書館でランチデートの後、彼はそう言ってビジネス書が置かれている一番奥の棚へと消えていった。

「彼氏、いい男じゃん」

返却された本の整理をしているあたしの指に、そう言って長い指が触れた。

周囲には誰もいない。

「見せつけてくれるね」

髪を割って襟足を滑る指。

そのまま肩、腕と撫で下がり、タイツ越しに太股の裏を撫でられ、慌てて口を塞いだ。

「ダメだよ、こんな真っ昼間からそんな声。彼氏に聞こえるよ?」

言いながら更に深く太股を撫でてくる、同僚。

「だっ……め」

「何が?」

「何がって……」

「あんたが悪いんだぜ? つまんなそうな顔で彼氏の話するから、てっきり俺が欲しいんだなって思うじゃん」

「そんな……」

「嘘だね」

ヒソヒソと淫らな会話を交わしながら、彼の攻撃は止むどころか、エスカレートしてゆく。

カウンターの中、利用者からは見えない位置にしゃがみ、制服のスカートの中へと頭を入れ、刺激してくる。

タイツ越しに感じる舌、指。

そして熱い吐息――。

ただの同僚と“イケナイ”関係になったのは、ほんの一ヶ月前。

仕事が忙しい彼が構ってくれなくて、寂しくて、つい――。

“好き”なのは彼――

だけど“体が合う”のはこの男――

「あっ……」

足音がして顔を前に向けると、ビジネス書を抱えた彼がやって来るところだった。

「これ、借りたいんだけど」

あたしに向けられるにこやかな笑み。

そんな彼からは死角となっているカウンターの下では、同僚がその指であたしをいやらしく攻め続けている。

“好き”

だけど違う

「貸し出しですね。少々お待ちください」

あくまで司書としての顔で彼に接しながら、あたしは彼からビジネス書を受け取り、にっこりと微笑んだ。

喉元まで沸き上がっている快感をこらえて――。


fin

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