午前0時の図書館で
午前0時の図書館で
きゃっきゃと子供の騒ぐ声。パタパタと軽やかに走る音。

ここは森の中にある古い図書館。
甘く薫る山梔子の繁みの続く小道の先に、そこはある。

子供達は重い扉からすり抜けた。
駆け去る彼らは、皆透き通った姿形をしている。

「ねぇ、待って」

小さな女の子が、少し時を置いて扉をくぐる。

「早く、早く!」

少年が振り返って促した。

「早くしないと来ちゃう!」

「……君達、かくれんぼ?」

それを見て、私は山梔子の薫る小道で少年に声をかけた。

「あ、見つかっちゃった……」

「さては覗こうとしてたわね?」

察して軽く睨むと、少年はもじもじと身体を揺らした。

「……ちょっとだけ」

「私達幽霊なんだから、隠れなくてもあの人には分からないじゃない」

「でも、お姉ちゃん……、恥ずかしくない?」

「ん~、覗かれてる方が恥ずかしいかも」

「そういうもん?」

「そういうもん」
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