ヌードな夜【TABOO】
ヌードな夜
カランカランとグラスの中の氷が軽快に響く。
あたしは自分の指をマドラー代わりにして、彼の水割りをかき混ぜていた。
「はい、どうぞ」
コースターを動かして、グラスを彼の前へ移動させると、彼はニヤリと唇の端を上げた。
どうしてもと頼まれ、恋人には内緒で参加した合コン。
もちろん、人数合わせなんだけど、しかし、そこで、電流が走る出逢いをしてしまった。
「この後、予定は?」
二人でこっそり抜け出し、場所を変えて飲んでいる。
あたしが指でかき混ぜた水割りをゆっくり口に含んで味わった後、彼が訊いてきた。
「ん~、もう終電も出ちゃったし……」
“送ってくれる?”と続けたかったけれど、あえて飲み込んだ。
あからさますぎる。
けれど、瞳は嘘をつかない。
「送るよ。俺ももう、かなり酔ってるし」
瞳の輝きが、その言葉が嘘だと教えている。
まだ、全然平気そうじゃない。
「……いいの?」
頬杖をついて気だるく返したあたしに、彼が顔を近付け、ささやいた。
「……泊めてくれるなら」
願ってもなかった言葉。
「俺ん家は、猫がうるさいから」
その言葉で、あたしの中の罪悪感的な何かが音を立てて崩れた。
お互いに“秘密”にしなきゃいけないわけね。
「いいわよ。家には誰もいないから、朝まで二人きり」
「それはいい」
ちょっと軟派な匂いもするけど構わない。
座ったまま、彼が人目も憚らず、深いキスをしてきた。
外国映画みたいでうっとりとし、あたしは自分からも柔らかく絡ませた。
続きはあたしの家で。
一緒に……。
何もかも忘れて、ヌードに飲み直しましょ。
fin