優しく髪を梳かれる感覚に、薄く目を開けた。


私を覗き込んでいた彼が、柔らかく微笑む。
部屋にはまだ陽が射していない。
薄暗い夜明け前の明り。


おはよう。
短くそう言って、唇にキスを落とす。
もっと感じていたいのに、軽く触れただけで離れて行く。


追い縋るように上半身を起こすと、彼はベッドを軋ませて立ち上がる。
そしてゆっくりネクタイを結び始めた。


「……もう行っちゃうの?」


また背中を見送るんだ、と思うと、言いようもない寂しさが込み上げて来る。


必死に隠したつもりだったのに、感情は伝わってしまったのか。
彼は困ったように目を細めると、もう一度私の隣りに戻って来た。
そして今度は、額に唇を当てる。


「ごめん。朝一の飛行機で帰らないと。
午前中は抜けられない会議があるから」


そう言って私の髪をクシャクシャと撫でる彼。
我儘言ってしまったな、と反省する。

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