ドメスティック・エマージェンシー
第十六章
翌日、私はネットカフェにいた。

否、あの後からずっとネットカフェにいたのだ。
気を遣ってか、それとも煩わしいだけなのか、ゼロは私に近付くことはせず、狭い個室で出来るだけ離れてパソコンを見つめていた。

時計の針がいつの間にか8時を差した頃、ようやくゼロがそのままの姿勢だが口を開いた。

「行ってくる。夕方には戻るから、待ってろよ」

答える代わりに私はゼロを見た。
返事と捉えたゼロが個室を後にする。

後ろ姿をぼんやりと眺めながら、必死に頭は体へ使命を出していた。

――動け、追うんだ。
ゼロを知らなければならない。
私は、彼といなきゃならないのだ。
……それよりも、彼を知りたくなった。
どうして、あんな風に殺すのか。

あれでは、まるで殺人をやりたくないみたいじゃないか……






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