まほろば【現代編】

iii

飛龍君に促されてその鳥居をくぐった瞬間、何かが駆け抜け、体の中からすべての不浄が取り払われたような静逸な気分になった。

初めて来る場所のはずなのにどこか懐かしいその空間を飛龍君と並んで歩く。

小さな社の横を抜けて背後に回ると、立派な日本家屋が建っていた。

ただ、その形はどうやら普通の家とは少し違うように思えた。

その建物が平屋だというのはわかる。

だけど、何だろう? 

何かが違う。

不思議そうにそこに佇む私を知ってか知らずか、飛龍君は玄関の扉を開けた。

「ハルカ、いつまでそんな間抜け面してるつもりだ? 行くぞ」

……間抜け面って! 

反論しようと飛龍君のほうに顔を向けたら、時すでに遅し。

私のことなど無視してさっさと家の中へと入っていってしまっていた。
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