青空バスケ―3rd―
……好き。
栞奈side

蛯原さんと梨子さんが出て行った後……部屋の中には静けさが漂っていた。

あと、蛯原さんがつけていたと思われるキツい香水の匂いも……。


「……蓮、お前……」


大和が何かを言いかけると、蓮ちゃんがそれを遮るように立ち上がった。


「やっぱ、俺……帰るわ」


蓮ちゃんがゆっくりと玄関の方に向かって歩き始める……。


「……蓮ちゃん!」


……あたしが名前を呼ぶと、蓮ちゃんはピタリと足を止めた。


「蓮ちゃんは、最近何もかも上手くいかないって言ってたけど……。
一番上手くいかなかったのは……一番上手くいってほしかったのは……梨子さんとのことじゃないの?」


蓮ちゃん……蛯原さんじゃなくて、ずっと梨子さんのこと見てたじゃん。

大切そうに……でも、どこか辛そうな顔で……ずっと。

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