ブスも精一杯毎日を生きてるんです。


「本当になにも覚えてないんだな」

『はい…すいません。』

イライラとした口調で返され、思わず謝ってしまう。

「ここは俺の家。昨日の夜このマンションのエントランスのソファで死にかけてたブスはどこのどいつだ?」

またブス、って。

この男の口癖はブスなのかな?

だとしても失礼なやつだ。

『あー…。私です…。』

男の睨みがあまりに怖かったので私は恐る恐る答えた。

「そいつがあまりに死にそうな顔をしていたからこうして拾ってきてやったわけだ。もうちょっと感謝してくれてもいいんじゃない?」

む…。

なんと上から目線の男だろう。

これだからイケメンは。

私は内心ブツブツと悪態をつきながら、

『ありがとうございます。助かりました。』

と棒読みな台詞を述べた。



しばらく続く沈黙。

その沈黙を破ったのは目の前の男。

「…借金、払ってあげてもいいけど?」

『…は?」

「だから、一千万円の借金払ってあげてもいい、って言ってんの。」

…なんだこいつ。

いきなり現れて一千万くれるとか詐欺に違いない。

『…何が狙いですか。』

「まあ、俺にも妹がいるからな。お前みたいなやつ見捨てられない性なんだよ。それに、一千万なんて俺の起業した会社の売り上げの一割にも満たないしな。」

なにこのひと。

イケメンで性格良くて金持ちとか。

そうか…

この人は神様かもしれないぞ。

ちょっと口は悪いけど。
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