ブスも精一杯毎日を生きてるんです。
帰宅


ウィーン ガチャリ

五時間近く待ち続けたその音は、私がまさにこれから一眠りしようと思った時に訪れた。

一瞬、迎えに出ようかと思ったが、

暖かい毛布に潜り込んでしまったあと、戸口まで迎えに行くのはかなりめんどくさい。

それに、あいつの帰りをずっと待ってたと思われるのはいささか気分が悪い。

まあそんなわけで、もう一度目を閉じた私に聞こえてきたのは、

音もなく部屋に入ってきて、ネクタイをゆるめ、ジャケットを脱ぐ気配、

ではなくて、

「…っ……」

小さく息を飲むような音と、

ボタボタと何かの液体が床に落ちる音。
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