痛い恋なのかな?

 
 ――突然、シーンが飛んだ。
 さすが夢だ。

 今度はタマの家の前にいた。
 そう、これはあの試合の次の日だった。
 見に来てくれた礼くらいは、せめて言おうと思ったのだ。

 チャイムを鳴らす。
 玄関を開けたタマは、少し驚いたようだった。
 驚きはすぐに消えて、いつもの笑顔になる。

 
 ――タマの部屋。


 あたしの部屋、来るの久しぶりでしょ?

 うん、最後に来たの、いつだっけ?

 ン~、中学一年の春じゃない?

 
 小さな頃は、ホントによく遊びに行っていた。
 だけど、なんとなく気恥ずかしくなって、遊びに行かなくなった。
 思春期というやつだったんだろう。

 数年ぶりに入るタマの部屋は、だいぶ女の子っぽい部屋になっていた。
 やけにいい匂いもする。
 当たり前か。
 でも、本棚は相変わらずミステリー小説で一杯で、すごくほっとした。
 昔っからのミステリーマニア。
 小学校一年の時、図書委員をやりながら名探偵モノを二人で読んだのがきっかけだ。

 タマは大して散らかっているわけでもない部屋を片付けながら言う。


 なにか飲む? あたしね~、いま、紅茶にハマってるの。

 なんでもいい。


 ――俺は何となくそう言った。
 だが、きっと、ぶっきらぼうに聞こえたのだろう。
 タマは、ほんの一瞬、なにか考えるような表情を浮かべた。
 でもすぐに笑いながら、


 待っててね~。


 ――と言って、部屋を出ていった。
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