たっぷりのカフェラテをあなたと
 浩介のダイヤルを押し、彼が出るまで何度もかけた。
 案の定、留守電にすらつながらないコールが長々と続き……20回コールしたあたりで、とうとう浩介が不機嫌そうに電話に出た。

『忙しいって言ってるじゃん……どうしたんだよ』
「私、もう限界。会いに来て」
『え?』
「浩介の方から東京に会いに来て。もう私からそっちには行かないから」
『ど、どうしたんだよ、急に』

 電話口の浩介は明らかに慌てていた。
 でも私は最後の賭けに出たのだ……これで浩介が東京に来てくれなかったら本当に別れよう……と。

「じゃあ、忙しいところごめんね」

 浩介の返事は聞かず、携帯を切った。
 後悔はない。この後浩介がどう行動してくれるかで私の気持ちは固まるのだ。
 ある意味……3年ぶりに清々しい気持ちにすらなった。

 でも、この清々しさというのは、ほんの一時のマジックみたいなみたいなものだった。

 本当の苦しみはこの後に訪れた。
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