憑モノ落トシ


「おはよー、千代(ちよ)ちゃん」


間延びした口調で私を呼んだのは、幼馴染の日向(ひなた)君。


「おはよう。ちゃんと準備出来た?」


そんな私の問いに彼は、もーバッチリ!と答えた。
けれど目の前の人物は、

1、シャツのボタンが開けられすぎている。

2、ネクタイの位置が下すぎて、している意味が解らない。

3、肩から落ちかけている鞄のファスナーが開いている。


そんな訳だから、どうしてそんな自信満々に返事ができるのかが解らない。

もう服装の事は諦めよう。



「教科書は?間違ってないの?」

鞄から早速落ちたノートを拾い上げた彼にそう尋ねた。


日向君には私以外、学校に友達がいない。

だから彼が教科書を忘れた場合、必然的に私が見せてあげる事になる。
隣の席だし、仕方のない事だけれど、正直見づらいからできる限り避けたい。


因みに彼に友達がいないのは、別に嫌われているからではない。

ただ、怖がられているから。


< 2 / 22 >

この作品をシェア

pagetop