はなおの縁ー双葉編ー

みっつ

店に入ると、ちょうど昼の勝ち入れ時で店は客と店員でごったがえしていた。 

大半は帝大生ばかりだけれど、幾人かは一般の人も混ざっている。

そんな中、見慣れた臙脂の袴もチラリ、目に付く。

あれはうちの学校の袴で、彼の言うとおりだった。

彼と目が合った帝大生は声をかけ、決まってあたしをみた。

どの人もみな同じような反応をしていた。

中には彼に、「お前、小町を落としたのか?」なんていう人もいた。

あたしがここへ来ること自体が信じられない様子で、更に男連れときているので、あたしと彼が付き合っていると思っているらしかった。

一方、彼は終始、笑顔で受け答えしていた。

「さあね。」といって取り付く島さえも見せないでいた。

それが、あたしをひどく寂しくさせた。
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