17-甘い君たち-
Story1. 曖昧トライアングル



「ね、古文の課題さ、やってきた?」


桜川 南緒(サクラガワ ナオ)、16歳。
隣を歩く幼馴染にそう尋ねながら、いつもの通学路を行く足は軽やかだ。

雲ひとつない朝の青空に光る太陽は今日も眩しくて、夏休みが終わっただなんてまだ信じられないや。


「当たり前だろ。
まさか、またやってないの? 南緒。」


右隣からため息と共に、そんな声が落ちてくる。

幼馴染の、金沢 翔太(カナザワ ショウタ)、17歳。黒髪好青年(に見えるだけ)の秀才くんは、朝に弱いせいか今日も機嫌はよろしくないみたい。


「は? そんなんやってなくても生きていけるっつーの。なーっ? 南緒!」


左隣から明るい声を発したのは、これまた私の幼馴染、川上 尋 (カワカミ ジン)、17歳。

染めてないのに茶色の髪が、今日もふわふわと揺れている。尋が朝から異常にハイテンションなのは、いつものことだ。


「ちょっとー! 尋よりは課題真面目にやってるよ、私は!」

「尋より怠けたニンゲンなんてこの世にいない」

「はあ?! 俺だって真面目にやるときくらいあるっつーの……多分」


多分かよ、って翔太がツッコむのを聞いて、私は笑い出す。

残りのセミたちの鳴き声と、まだジリジリと私たちを照らす太陽に、夏はまだ終わらないなあ、なんて思う。


______高校2年、夏の終わり。


3人で歩く、学校までの通学路。

段々と学校が近づいてきて、周りにうちの学校の生徒が増え出すと、ひそひそとこっちを横目に見ながら何か言っている人たちが目につき始める。


その内容は、もう誰もがわかっていることだけど。


いつものように、尋と翔太が私を挟んで登校するこの光景は、きっとこの学校の生徒ならだれでも知っている。


何故なら、翔太と尋がかなり人目をひく外見をしているからだ。


そう、この2人は " 美形幼馴染 " なんていうあだ名で噂されるほど容姿が整っている。_______つまるところ、めちゃくちゃカッコいい。


そして、そんな2人に挟まれた3人目の幼馴染である私は、誰がどう見ても " 普通 " の女子高生。


そりゃあ、毎日飽きもしないで噂話にされるほど変な話なのかもしれない。

こんな美形二人組が、こんな普通な私を、とっても大事にしてくれてる、ってことは。

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