河の流れは絶えず~和泉編~

ふたつ

神田町に入ってからなじみの蕎麦屋へと向かった。

本を探す前に腹ごしらえをしておきたかった。

「ここへはもうすいぶん通われているんですか?」

とあたりを見回しながら聞いてくる。

「うん、一高時代からね。金はないからひたすら歩いて通って、古本ばかり漁ってるよ。でも、おかげで、店のおやじさんらには顔を覚えてもらっているから、安く譲ってもらえるようになったよ。」

蕎麦屋で向かい合いで座りながら話をする。

「わあ、すごいなあ。あたしは古本屋という考えはなかったから、もっぱら学校の図書館通いばかりでした。」

ため息まじりで続ける。
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