妖(あやかし)狩り・参~恋吹雪~
第二章
 ということで呉羽の屋敷まで来た右丸とほたるだったが、二人とも落ち着かない。
 呉羽はそんな二人の様子に気づくこともなく、鼻歌交じりに梅の枝をその辺の壺に挿しては、ちょっと離れて見たりしている。

「う~ん、なかなかぴったり合う器がないなぁ。なぁこれ、やっぱり水がいるのかな」

 そう言って振り返るが、呉羽のほうを見ているのは烏丸だけだ。
 右丸の膝の上の烏丸は、右丸と呉羽をきょろきょろと見比べると、ばさばさ、と羽ばたいて、呉羽の傍に飛んできた。
 こそっと呉羽に耳打ちする。

「ね、お姉さん。ちょっとはさ、右丸の相手もしてあげてよ。右丸、お姉さんに会いに、ここまで来たのよ?」

「ん? ああ、そうだな。いやでも、用は、もう済んだろ? 礼はさっき、もう言われたし」

「そうじゃなくてさ~」

「それよりさ、あの女官・・・・・・」

 烏丸を遮り、呉羽は肩越しに、部屋の中に悠然と座るほたるを見た。

 ただ座るだけにも、貴族社会に生きる者は、普段の立ち位置が出るものだ。
 右丸は部屋の隅にちんまりと座り、ほたるは遠慮無く部屋の中央の円座に座っている。
 ともすれば上座に座りそうなほどの居丈高さだ。
 座る姿も、ぴしっと決まっている。
 ・・・・・・何故か顔は強張っているが。

 一方そはや丸は、そんなほたるの態度など全く意に介さず、彼女の前の壁にもたれて、片膝を立て、もう片足は投げ出している。
 貴人に対する態度ではない。
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