あの頃のように
2014年11月
 * * *



「入れよ」


ガチャ。

我ながらぞんざいな口調でマンションのドアを開けた。


少し広めのワンルーム。


ソファにカバンを投げ出して、上着をポールスタンドに掛ける。

振り返ると、沙稀はドアを入ったところで、ぽつんと所在なげに立っていた。


「荷物、置けよ」


沙稀は周りをキョロキョロ見回して、ポールスタンドの足元にそっとカバンを置いた。


「これ、先に帰るときに要るだろ」


そっけなくテーブルの上に合鍵を置く。


「洗面所はあっちだ。好きに使え」


沙稀は従順に、指を差された方を見た。

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