あの頃のように
ブルブル……

不意に、ポケットの中のケータイが震えた。


(——あ)


公衆電話からの着信。

山下さんからだ。


足がつかないように、なんて言って、山下さんはいつも公衆電話から掛けてくる。

芝居がかったことが好きな山下さん。


「……はい」

「沙稀ちゃん? 今大丈夫?」

「はい」


小走りにリビングに入ってファンヒーターのスイッチを入れた。

吹き出す暖かい風を独り占めする。

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