その日じゅう、俺は仕事がまったく手につかず、ミスしないようにするのが精一杯だった。

土曜出勤は取引先からの電話もないし、もともと気が緩みがちになるのだけど。


頭の中は沙稀のことがぐるぐる回っていた。

2年前に“俺をまんまとハメた女”。

その、2年間練り上げたイメージと、目の前の沙稀とのギャップにひたすら混乱している俺がいた。


(ギャップだって?)


――待て。

あれも演技かもしれないじゃないか。


ドキュメント作成の仕事はどうやら好きらしく、よくこなしているらしい。

給料も前よりははるかにいい。

俺をうまく丸め込んでおくことはメリットがあるだろう。

見た目よりもずいぶん頭の回る子なのはわかってる。

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