キモチの欠片

身体から葵の温もりがあっけなく消えて寂しいと感じてしまった。

ちょっと待って。寂しいってなに?

離れてと言ったのはあたしなのに。

自分の感情が理解できない。
いったいどうしたというんだろう。


さっきの葵の声が耳から離れなくて心を鷲掴みにされたままだ。


落ち着きを取り戻しゆっくりと立ち上がった。




洗い物を済ませベランダを見ると葵がこっちに背を向けてタバコを吸っている。



あ、ボリボリと頭を掻きむしってる。

なんとなく葵を観察してみた。

くるりと向きを変えベランダの手摺に背中を預け、空に向かって紫煙を吐きだした。


タバコを携帯灰皿に擦り付け、ふっと視線を下げた葵とガラス越しで目が合う。



ドクン、と胸が高鳴った。


はっ?なにこれ。

葵と目が合っただけで胸が高鳴るってどういうことよ。


慌てて視線をそらし、戸惑う気持ち整理しようと深呼吸した。


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