キモチの欠片

朔ちゃんの言葉が胸に響く。
あたしのことを想って言ってくれているんだ。

「開店前なのに邪魔してごめんね」

朔ちゃんにしてみたら、なにしに来たのか分からないよね。
たちの悪い客がただ愚痴りに来ただけみたいな。

「そんなこと気にすんな。いつでも来いよ、待ってるから」

ホント朔ちゃんは優しすぎるからいつも甘えてしまう。

「ありがとう。じゃあまたね」

朔ちゃんに手を振りお店のドアを開けた。


「柚音、気を付けて帰れよ。くれぐれも変な男について行ったり寄り道なんかせず真っ直ぐ家に帰るんだぞ」

もぅ、なによそれ。子供扱いしないで欲しい。
社会人なんだから立派な大人だと思うんだけど。


「分かってますよーだっ」

チラッと振り向いて、ベッと舌を出して外に出た。


お店のドアを閉めた後、店内で「思いっきりガキじゃねぇか」と言って朔ちゃんが苦笑いしていた。

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