明日へのメモリー

 そして今。

 夢の夜の仕上げのように、東京を見下ろすスカイラウンジで、樹さんと並んで街の灯を眺めている。

 食事の後、静かな場所で話したいことがある、と言ったら、ここへ連れてきてくれた。

 こういう所に二人きりで来るのは初めてだ。


 急に無口になったわたしに、彼が軽いカクテルを薦めてくれる。

「そ、それじゃまず、わたし達の久しぶりの再会に乾杯する?」

 無理やり陽気にグラスを取り上げると彼もそうする。カチリとかすかに触れ合わせ、カクテルを一口含んだ。

 甘くてどこかほろ苦い。最後の夜にぴったりだ。

「わたし達、初めて会ってから、どれくらい経つんだっけ?」

 一生懸命、明るく彼を見上げた。もちろん昨日のことのように覚えているけれど、彼の口から言って欲しかった。

「急に何を言い出すかと思えば……。もう三年以上経っただろ? 長かったようで、あっという間だったな」

 忘れたのかよ、相変わらず頭悪い奴……。こつんと頭をこずかれ、どうせ、F女子大ですよー、K大には遠く及びませんから と舌を出す。


「そうそう。あの時、いきなり酔っ払ったおじいちゃんに呼ばれて……」

「お子様だったもんなぁ、お前……。中学生にしか見えなかったぞ」

「悪かったわね!」笑いながら、ちょっと膨れて言い返す。

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