スーツを着た悪魔【完結】

二人きりの出張


週が明けた月曜日早々。

まゆは久しぶりにOrlandoに出勤してきた深青から呼び出され、出張のお供を仰せつかった。



「出張、ですか……?」

「ええ。宜しくお願いします」



それだけ端的に告げ、深青はデスクの上の書類をめくり始める。



「あの……」

「はい?」



深青は他人行儀に顔を上げ、軽く首を傾げる。


周囲に人の目があるとはいえ、彼の瞳はとくになんの感慨も――

たとえばまゆを軽蔑しているような気配は抱いていないように見える。


どうして?

本当は、朝倉さんが私のことを話していると思ったのに……。
聞いてないんだろうか。



「出張先は京都ですが、一泊ですので、その準備を怠らずに」

「えっ!?」

「展示会のあと、懇親会という名のパーティーがあるので宜しくお願いします」

「――はい……」



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