それでもここが僕等の居場所
それでもここが僕等の居場所

結婚式

僕は白いタキシードに身を包んで

美緒のことを思い出していた。

扉が開いた。

純白のドレスに身を包んだ

女性がにこやかに部屋に入ってきた。

「どうかな?……綺麗?」

「あぁ。とってもね」

僕も微笑み返して言った。

2年前。

美緒がいなくなって8年。

美緒から連絡があった。

「私ね。もうすぐ死ぬんだ」

そう言って泣いていた。

美緒は結婚をしていなかった。

僕だってしていなかった。

病気はあれから、酷くなりとうとう。

あと3週間ももたないと

医者に言われたらしい。

僕はお見舞いに行きたいと言った。

でも美緒は泣きながら言った。

「ダメよ。私はここで1人で死ぬの。たった1人で。誰も私の死に際なんて見ない。夜中にひっそりと息をひきとるのよ。……あぁ。泣かないでよ、颯太。これでいいのよ。そもそも、あのときの別れ際にあなたに、あんな約束をしたのがいけなかったの。私はあのときにすでに、死ぬんだとわかってたんだから。それでも、私は生きる希望を持ちたかったの。でも、足掻いてもここまでが限界だったみたい。考えれば8年もよく、私の身体はもったわ。……1人で死ぬのが恐くないのかって?」

美緒は震えた声で

笑いながら言った。

「恐いに決まってるじゃない。でもね。あなたには来てほしくないの。……確かにあなたに手を握ってもらって、穏やかな気持ちで死ねるのは私にとってはいいことよ。……でもね?なら、のこされたあなたはどうなるの?私の死に際を見てしまったら、あなたはもう誰も愛さないわ。あなたは幸せになれなくなる。そんなの私は嫌なの。………だから、これでバイバイよ」

美緒はふふふっと笑って

最後にこう呟いた。












































「……私も約束守りたかったよ」
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