臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
話し掛けたい
再決心をした一週間の始まりの朝。

冷たい風が顔に当たる。

麻由子は黒と白のチェックのマフラーを風がすき間に入らないよう、少しきつめに巻き、気合いを入れる。


数メートル先を歩く航平に狙いをさだめて、追い付くようにと歩く速度を上げる。

航平との距離は僅かに縮まった。


小さく深呼吸。勇気を出す。すぐすこに狙う物がある。


「速水さん、おはようございます」


航平の隣りに並び、挨拶をする。声が震えそうになったから、巻いたマフラーを右手でギュッと握る。


「おはよう、今日も風が冷たいね」


航平は首をすぼめる。


「はい。あたし、昨日こたつを出しました」


麻由子は挨拶するだけでなく、自分から話をしようと決めていた。まず話題は冬の必需品であるこたつ。
< 119 / 255 >

この作品をシェア

pagetop