臆病な恋心~オフィスで甘く守られて~
もっと話したい
それから、麻由子は出来る限り、航平の出勤時間に合わせて、挨拶することを頑張った。

麻由子からは「おはようございます」しか言えなかったけど航平がいつも話題を提供してくれた。

といっても…「今日は寒いね」とか「風が強いね」とか天気の話ばかりで、麻由子は「そうですね」と返すだけだった。


本当に当たり障りのない少しの会話だけど、話せることが何よりも嬉しい麻由子であった。麻由子の朝は以前よりもずっと楽しい朝になっていた。

見るだけでの満足は、挨拶することへの満足に変わった。


「でもさー、もう少し違う話が出来ないの?」


毎日話せたことを楽しそうに語る麻由子に、千尋は呆れていた。


「もう少しって、何を話すの?」


話せることが楽しく満足しているというのに…麻由子は不思議そうに首を傾げる。
< 51 / 255 >

この作品をシェア

pagetop