恋獄 ~ 囚われの花 ~【完】

3.雪也のお誘い




13:30。

昼食の後、花澄と環は入り口近くの作業台の上で草花の片づけをしていた。

そろそろ塚原さんが迎えに来る時間だ。

花澄はちらりと壁に掛かった時計を見た。

と、そのとき。


「こんにちはー」


工房の入り口から、テノールの声と共に見覚えのある顔が現れた。

平日とは違い、ジーンズと春らしい色合いのシャツを身に着けているが、その柔らかい雰囲気は学校で見る時と変わらない。


「……あれ、雪くん?」


今日の午後から屋敷に来るとは言っていたが、まさか工房に来るとは思ってもみなかった。

突然のことにドキっとした花澄だったが、雪也の後ろから現れた人影に思わず眉根を寄せた。


「……相変わらず物凄い匂いね、ここ」


と言いながら雪也の後ろから現れた美鈴は、女らしいワンピースを身に着け、可愛い革のローファーを履いている。

工房で作業するからと、ハーフジーンズにTシャツ、スポーツシューズを身に着けている自分とは雲泥の差だ。


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