体育館の天井に挟まっているバレーボール





「映画行くぞ。」

「決定事項なんですか、それ。」

「当たり前だろ。」

放課後開口一番に先輩はそう言った。
は、と口を開けたままの私を置いて鞄を肩にかついでどんどんと歩いていってしまう。

急に映画行くとか言われても、何見るんですか、と聞くと着いたら教える、とぶっきらぼうに言われた。

「先輩、私今日お金ないんですけど。」

「じゃあ貸しで。」

「てか映画行くつもりだったら言っておいてくださいよ。映画ってけっこう高いんですよ。」

「わりーな。」

「全然悪いと思ってないですよね、先輩。」

「おぅ。」

「……もういいです。」


会話がめんどくさくなって下を向く。
所々剥がれてしまっている淡い桃色のアスファルト。
あと一ヶ月もすれば秋になって落ち葉がたくさん積もるだろう。
秋か、ついこの間、春に高校に入学したばかりだと思ったのに。
月日が経つのは早いな、と思った。
秋になれば、第二体育館の工事が始まる。
そして、先輩もいなくなる。



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