罪深き友情
「ふあ~、こんなに呑んだの、久しぶり~」
 正樹も武士も学生時代からの友人。何の遠慮も要らない。
 扶美はコタツに首までもぐりこんだ。
「じゃあ俺も~」
 隣に正樹がもぐりこむ。
「ちょっと、狭いよ?」
「いいじゃん、彼氏の特権ってやつだよ」
 甘えるように寄り添われれば、強く突き放すこともできない。この可愛さは、ずるい。
「俺も。扶美の隣、寝る~」
 いつもは真面目な武士まで、身を屈めてコタツにもぐりこんできた。
「せ~ま~い~! 狭いってば!」
 大柄な男に挟まれた扶美はけらけらと笑う。

……学生時代に戻ったみたい。
 あのころは何のしがらみもない、本当の『友達』だった……

 正樹を選んだことを後悔してはいない。
 甘え上手な彼との恋は、友達の延長線。喧嘩して、じゃれあって……それはそれで心地良い。
(でも……)
 軽いいびきをかき始めたカレシではなく、『友人』である彼に目を向ける。
 酒に潤んだ武士の瞳が、視線に熱っぽく絡まった。
 
 甘く高まってゆく胸の鼓動はあの日と同じリズムを刻む。
 
 そう、子供っぽい片思いをしていた。
 低く差し込む夕日に照らされた教室で同じ時間を過ごした、淡い初恋。

「!」

 彼の手が、コタツの中で太ももに触れた。
 ジーンズ越しでも感じる掌の厚み。節の強い指は物欲しそうにするりと脚を這い回る。
 カレシのいびきが響く中で触れられる背徳は、痺れとなって思考を侵す。
「ずっと好きだった。そばに居られるなら友達のままでもいいと思っていた……」
 呼吸の熱を感じるくらい近くに……耳朶に唇をつけて、続きは鼓膜を震わせる。
「でも、友達から……卒業したい」
 頼りなく布目をなぞっていた手が、明らかな劣情を含んで這い上がった。
 小さなリップ音と共に、耳の先に痺れが咲く。
 
……蕩けてゆく……
 ここまで『友情』だと信じて疑いもしなかった打算が暴かれる。
 この関係が続くならと、正樹の告白を受け入れた。カレシとその友人という鎖で二人とも繋いでおきたかったから。

 背中にかかるいびきを気にしながら、扶美は武士を振り見る。
 鼻先が触れるほど近くで絡み合う視線。
 『友情』の鎖を解き放って……扶美は武士が差し出すキスをそっと受け取った。

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