光の花は風に吹かれて
Act.3:葉っぱがついてきたみたい。 
『とー』

セストの名を呼びながら、くるくると研究室を吹いて回るルカの風。自分のくせっ毛がなびくのを感じながらも、セストは昨日の城内健康診断についての報告書を確認していた。

否……眺めていた。

『とぉー!』

反応のないセストに怒ってルカが風速を上げても、セストは頬杖をついたまま動かない。

――一体何に利用するつもりですの?

――貴方がローズを利用したことは事実です。

過去、セストがローズを利用したことは変えようのない事実。その結果、ローズのそのときの記憶が歪んでしまったのも。

けれど、これ以上ローズを利用するつもりなどセストにはなくて。

「……言い訳…………」

セストは頬に添えていた手を額へと当ててうなだれた。

今まで自分のやるべきことをやってきた。利用してきた人間はたくさんいたし、“レオのため”という自分の正義が相手にとってもそうだとは思っていない。

正直、善か悪か、そんなことはどうでも良かった。

こんな気分になったことは――こんなに後味の悪い任務などは初めてだ。

誰のせいでもない。

セストが完全にマスターしてもいない呪文を使ったせいだ。己の自信過剰が招いたこと。
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