金色のネコは海を泳ぐ

Act.6.5:僕と兄様

僕には2人の兄様といっぱいの姉様がいるんだ。でも、僕が好きなのはたった1人だけ――僕とは父様が違うけど、母様にとってもよく似た優しい姉様。

金色の長い髪が真っ直ぐで、とっても綺麗な人なんだ。青い目が大きくてくりくりしてて、僕もあんな色の目が良かったな。

姉様は兄様とケッコンしたら、お城でいっぱいいじわるされて、いっぱい泣いてた。

だから僕は兄様が嫌いだったんだ。

ネコになって歩けるようになってからはずっと姉様を見てた。姉様がお城を出て行っちゃって、僕も姉様と同じところに行きたくて。マーレ王国っていうところはちょっと遠かったけど、僕、姉様の匂いはわかるんだよ?

またいっぱい泣いてると思った姉様は、兄様にいっぱい抱っこしてもらって、いっぱい口と口をくっつけて、いっぱい笑ってた。

姉様は、兄様のことが大好きなんだ。

ずっと、こっそり姉様を見てたのに、兄様は僕に気づいてたんだよ。いっつも、ニッコリ笑って片目を瞑って……兄様は僕がジュストだってきっとわかったんだ。

だからね、僕は「仲良くしてね」って、お別れの挨拶をした。

ルミエール王国には帰りたくない。あそこは嫌い。姉様がいっぱい泣いたところだから。

でも行くところはなくて、僕、またひとりぼっちになっちゃって、海を泳いでた。

そしたら、ルーチェに会ったんだ。茶色と金色が混ざった髪の毛は姉様みたいに真っ直ぐで、茶色い目で僕を見てたルーチェはやっぱり姉様みたいに泣いてた。

僕、ルーチェと一緒にいたい。

それなのに、ルーチェは僕のことネコだと思ってた。いっぱい話しかけてたのに……
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