淫靡な背中【TABOO】
淫靡な背中
最近、よく文字を書く。

ライターという仕事柄、携帯やスマホといった小型の通信端末は、本来の“電話”以外にも“書く”と言う役目を充分に果たしてくれる、今やなくてはならない大切なアイテム。

「仕事熱心だね」

互いに背中をくっつけて座り、それぞれの時間を過ごしている――今、彼は大好きな読書に夢中だ。

「今度の取材対象は結構おしゃべりで」

取材時に使用するポータブルレコーダーと耳を繋いでいるイヤホンを外し、微笑みを表すように肩を揺らしてみると、彼も同じように返してきた。

そのまま頭を寄せて軽くキスをする。

そしてまた、それぞれの時間に戻る。

背中越しに伝わる体温が心地いい。

だけど――

メール画面を起動して打ち込んでいる文章は原稿起こしじゃない。

イヤホンから流れているのも取材内容じゃない。

親指は、元カレへの愛の囁き。

そして鼓膜で受け止めているのも、昼間交わした元カレとの密な声。

そう――

俺は、背中越しに感じる彼を、昼間、裏切っている。

そして、ベッドの中で元カレと合わせた背中に、今の彼を重ねている。

親指は、今日も動く。

明日の約束を取り付けるために――。


fin

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