晴れのち雨


「残酷だねぇ〜アオは」


机に肘をついて結衣が言う。
ある程度、自分の気持ちを整理して
私はこれまでの事を話した。

「うん。そうだね...」

それしか言えない。

「好きな人と気になる人の違いって何?」

「うーん。なんだろう...」

「ほら。そこだよ」

「どうして"好きな人"じゃなくて"気になる人"がいるってシュウさんに言ったの?」

「わかんない。」

「わかるでしょ。」

結衣が私にチョップする。

「アオはシュウさんを少しでも傷つけたくなくて曖昧にしたんでしょ?」

...そうなのかな
だけど否定は出来ない。
あの時本当は先生の存在が
私の中で大きくなっていたことに
気づいていたはずだから。
そして、少しでも悪く思われたくなかったはずだ。

「そうなのかも。」

「そこなの。
優しさは時には残酷なの。
それならきっぱり他に好きな人が出来たって言われた方がマシだよ。」

大袈裟に溜息をして両手を上げる結衣。

「そっか...今度から気をつける。」

「うん。にしても、シュウさんと別れるなんて勿体無いよ!
オッサンのどこがいいの?!」

オッサンって....

結衣の言葉をきっかけに考えてみる。

私は先生のどこが好きなんだろう。

優しい所? 声が好き? 笑顔? 人柄?

どれも合っててどれも違う気がする。

「全部。」

「は?! 愛は盲目的な??」

「かもね」




「頑張れよ...」

シュウに別れを告げた日
部屋を出る私に彼がポツリと言った言葉をふと思い出す。

何を頑張ればいいのか分からないれど
先生を好きな気持ちは貫こうと思った。


「ちょっとアオ!聞いてる?」

ぼーっとしている私に結衣が怒る。

「ごめん。ごめん。帰ろっか?」

天気予報が梅雨入りを伝える季節中
二人で帰った。



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