Firstly

/困るんですけど。

帝都をぐるりと囲う塀にある2つの大門。

西側にある一つの門にほど近いところにシュリアナの邸宅はあった。

無事たどり着いてようやく、貴族の屋敷にしては辺鄙な場所ながら便利な時もあるものだと感心した。

しかし、平穏は訪れない。

まず屋敷の入口に待ちかまえていたのは、今度の厄介事を持ち込んだ張本人。

「ど、どうだった!?」

横を通り過ぎながら、冷たい視線を送る。

心当たりのある父エーベルト伯爵は黙り込んで、それでも末娘に追いすがる。

自室へ上がるため階段に向かうと、そこには母親まで立って待っていた。

ある意味、この母のほうが手強い。

溜め息をついて父を振り返る。

「無事、婚姻の誓いはしました。少し疲れたので失礼いたします。」

証拠である金の腕輪をしっかりと見せつけて、階段を上がった。


< 6 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop