アドラーキャット


「おめでとう‼」

「ありがとうございます。」


数日後開かれた祝賀会では、合格後特有のすっきりした顔の二人がやってきた。
礼儀正しくお礼を言う祐介くんにぺこりとお辞儀だけする荻野目くん。

私は冷蔵庫から買ったホールケーキをテーブルにどん、と誇らしげに置いた。

「ほら‼お祝いのケーキ‼私のバイト代かなり投資したんだよ‼」

「みずき部屋綺麗になったね。」

「感謝の言葉なし!?」

お礼も言わない荻野目くんとは対照的に祐介くんは礼儀正しく頭を下げた。

「ありがとうございます、瑞希先輩。でも本当に先輩の部屋の物減りましたね。」

「大掃除?」

「んー、てか、彼氏と別れたから。」

「……。」

「……そうだったんですか。」

「そこでニヤつくとか君たち本当に失礼だよね‼」

それなりにうまくいっていたつもりだったけど、私はセンター試験の時の休みにフられた。

別に、喧嘩もないし、そんなに関係は悪くなかったと思ったんだけど。

「なんか、お前が友達じゃない位置にいるのって、すごい変な感じがしてさ。だから、悪いけど、友達に戻らない?」

そんな風に言われたら、どう断れば良かったのか。
彼は私のことを嫌いになったわけじゃないし、関係も今までと対して変わらないだろう。
友達として映画にも一緒にいくし、カフェに行ってお茶を飲んだり、相手の部屋に行って漫画読んだり。
いっそ別に好きな人が出来ただとか言ってくれれば、泣いて責めることもできたのに。
ぶつける相手のないイライラを私はただ物にぶつけるしかなかったのだ。

今ではもう、特に悲しくなることもなく彼と接することができるようになったけど。

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