アカイ花†Vermilion Flower

天気予報は外れ


ザーーーーーー

そう、今の私の頭上には雨が降る。

夜の街、急に降り出した雨に傘を持たない私は、ずぶ濡れ状態のまま赤信号で立ち止まり、信号を見る事は無く自分の足元を見つめた。


あ~あ

天気予報を信じて新しい靴なんて履かなきゃよかったよ。


そう、雨をいっぱいに含んでくたびれているこのスエードの靴は、昨日新調したばかりで下ろし立て。

今朝、箱から出したばかりの、あの何とも言えない可愛さは今はもう見る影も無い。


『今日は、ごめん、悪い
 また連絡するよ』


今の彼との間でこういうやり取りはよくある事で、会う約束をキャンセルされてもそんなには腹も立たない。

だけど、自分が大切にしているものがこんな風に汚れたり、無くなったりする事には無性に腹が立ってしまう。

大事にしなかった自分自身に、ムカつく。
< 5 / 218 >

この作品をシェア

pagetop