Little Santa
第一章【聖夜】



段ボールを張り付けた窓の向こうに、遠く讃美歌の調べが聴こえる。







目を閉じているとその歌声は、神に見放された俺に何か特別な施しを届けようとさえしているような、そんな気がしてくる。


苦笑いをして、膝を深く抱え直す。


殺風景な暗い天井に星空を透かしてみる。



「クリスマスか………」





あれはあの教会の、“特別な日”を祝う、子供達の歌声なのだろう。

時折混じる黄色い笑い声は、不思議なくらい俺の心を和ませてくれる。





俺もいつか、またああやって、何かを笑顔で祝福出来る人間に戻れるのだろうか……。











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いつに無くごった返す客は、誰もがどこか、非日常の浮かれたベールを纏い、あの格安のスーパーマーケットでさえもが、『特別』をもてなそうと意匠を凝らしていた。

銀色の星模様が配(あしら)われたサンタクロースの赤い長靴には、リボンで飾られたお菓子が色とりどりに顔を覗かせ、惣菜のフロアーには、骨を銀紙で包(くる)んだ鶏のモモ肉が、堆く盛られていて………。



人目を気にしながら財布の底の小銭を数える……。



パック詰め148円の冷たい炒飯と、六枚切り98円の特売の食パンを手に取り、人の等身大に模されたサンタクロースの髭を横目に足早にレジへと向かう。






日常と言うにはあまりにも味気ない、貧しい食事だ。
ただ、空腹を満たすだけの嵩があれば………
…………それでいい。










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ランプの灯りに白く浮き上がる、さっき運ばれたレジ袋にぼんやりと目をやる。








俺はその冷たい夕飯には口を付けず、子供達の微かに届く澄んだ歌声に、いつまでも耳を傾けていた。








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