瀬々悠の裏事情
話し好きな女中達



「旦那様?いい人よね。」

「そうね。威張ったりしないし、給料高いし」

「あと私達に可愛いって言って下さるわ」

「旦那様の方が可愛いけど。イベント大好きな方よね」

「そうそう。旦那様ハロウィン大好きよね。お嬢様達からお菓子貰えないと拗ねてたり」

「ねー!私達の倍ぐらい生きてるはずなのに、若々しいというか子供っぽいというか」

「三十路……いや高校生でも通るわ絶対」

「それはさすがに……というか旦那様っておいくつ?」

「さぁ…はっきりは知らないけど、50歳ぐらいじゃなかった?」

「うそ!見た目詐欺じゃない!」

「確かに。今度じっくり見てみるわ。でもいつお帰りになるのかしら」

「聞いた話じゃ、シュタットプラッツァに行ったみたいだから、暫くは屋敷に戻って来ないんじゃない?」

「普段から忙しい方だものね」

「けど旦那様からしたら、その方がいいんじゃない?」

「どうして?お嬢様方と会えなくて寂しがるじゃない」

「それはそうだけど、ほら……奥様と会わなくて済むじゃない?」

「ああ…」

「奥様、旦那様に異様にキツいわよね。まぁ元々キツい方みたいだけど」

「美人なのにね」

「美人だからよ。確か奥様って異国から嫁いでいらしたのよね?」

「らしいわよ。生家は七華と同じくらいの名門だとか」

「もしかして政略結婚?」

「そうじゃない?七華の方々もそうみたいだし」

「ソフィアお嬢様も橘家に輿入れしたものね」

「血を守る為には仕方のない事だけど、結婚相手くらいは自分で選びたいわ」

「そうねぇ。だから旦那様は…――」

「旦那様がどうかした?」

「ううん。そう言えば近々縁談があるらしいわよ」

「それってリシアお嬢様?それともアリアお嬢様?」

「違うわ。月子お嬢様よ」

「月子お嬢様って……まだ成人してないのに。旦那様にしては意外ね」

「断りづらい相手だったとか?まさか御三家?」

「さぁ…相手の方は詳しく知らないけど、噂じゃ奥様が独断で決めたとかって」

「奥様が?何でまた」

「そういえば奥様って、月子お嬢様にもキツかったわよね」

「言われてみれば。月子お嬢様だけ屋敷の外には一切出させて貰えてないし、学校すら通わせて貰えてないみたいだし」

「変な話よね。大人しくて私達にも優しくて可愛らしい方なのに。奥様はどこが気に入らないのかしら。仮にも自分の娘よ」

「分からないわ。キツい上に気難しい方だし。この家に好きで嫁いだわけじゃないみたいだから、全てが気に入らないんじゃない」

「そんなものかしら……でも月子お嬢様が嫁がれたら、坊ちゃんはさぞ寂しがるでしょうね」

「坊ちゃんは旦那様に似て愉快な方だけど、月子お嬢様を誰より大切になっさってるし」

「名門って色々と大変よね」

「お金もゆとりもそんなにないけど、私達の方が幸せって感じがするわ」

「本当にね」


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