・*不器用な2人*・
第3章/梶君の友達
放課後、HRが終わり教室から出ると、梶君と鉢合わせになった。

向こうは男子たちと一緒だったけれど、私に気付くと「おう」と手をあげてあいさつをしてくれた。

「梶の彼女?」

そう言う男子の脇を軽く小突き、梶君は「小学校の同級生」と言った。

「梶君これから部活?」

私が訊ねると、彼は「帰るとこ」と言った。

まだ1年生は部活がないらしい。

私は「そっか」と呟きそのままその場を去ろうとした。


「方面同じだし、一緒に帰るか?」

背中にそんな言葉をかけられなければ、私は逃げるように家へともどっていたと思う。

私が返事に困っているのをお構いなしに、梶君は一緒にいた男子たちに
「風野一緒でもいいよな?」と同意を求める。

男子たちは女子が混ざるということに「もちろん」と即答した。




「風野さんってどこ中出身なの?」

梶君と先ほどクラブハウスで知り合ったらしい浅井君が、率先して話題を振ってくる。

「城下女学院ってところ。」

私が答えると、他の男子たちも振り返る。

「城下って超頭いいとこじゃん。
何でうちの高校入ったの!?」

その質問に答えにくかったものの、クラスメートたちのような悪意が彼らにないことは分かっていた。

「勉強についていけなくなったから…。」

苦笑いしながら私が答えると、みんな納得してくれた。

クラスの人達にもこの言い訳を使えばよかったと、今さらながらに思った。




家が近付いてくると、浅井君たちと別れ、梶君と2人きりになった。

とたんに会話はなくなり、なんとなく気まずい空気が流れる。

よくよく考えたら、私たちは小学生の時特に仲がいいわけでもなかった。

梶君も沈黙が気になるのか、時々私の顔を盗み見る。

「浅いが変なこと聞いてごめんな。」

不意に言われた。

私は慌てて顔を上げて、「なんのこと?」と首を傾げる。

「どうしてうちの高校に来たかってやつ…」

梶君は昼休みからの数時間で私の噂を聞いたのか、私から視線をそらしながら小声で言った。

「気にしてないよ。」

私も小声で返した。




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