災厄の魔女
序章

風に揺れる炎。
闇に昇る黒煙。
鳴り響く絶望の声。



1つの町が滅びゆくその姿を静かに見下ろす1人の女性。


柔らかなモカブラウンの髪を揺らす彼女は高い屋上の縁に腰掛け、投げ出した長い脚をユラユラと揺らしてみせる。


少しでもバランスを崩せば数十メートル先の地面に真っ逆様。


それが分かっているにも関わらず、彼女は平然と其処に腰掛け続ける。




 「……」


彼女の周りに不思議と浮かぶティーカップにプティガトー。


手にしたトリュフを口に運ぶと、自然とティーカップに紅茶が注がれる。




 「この…災厄をもたらす魔女が……!」


取っ手に指を添えた所で聞こえてきた男の声。


屋上の扉を開いた人物は隙だらけの女性の背目掛け矢を放つ。



しかし、彼女の背に触れる直前で放たれた二本の矢の速度は0となる。




 「…残念…君には私を殺す資格は無いようだ」


 「っ……!」


矢が落ち地に転がる音と同時に耳元で聞こえた女性特有の高い声。


反射的に振り返るがもう遅い。

既に手遅れだった。






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