夢現
折りたたみ傘
一本、一本。
ぱきぱきと音を立てて折れ曲がる。
横に続く、同じく細い骨たちも折れていく。
どんどん折れて、小さく折りたたまれていく。
そんな中で、一本だけ折れない骨があった。
引っ張られて、次の骨は折れる事もできない。
ただ、折れる事ができない事に文句は言わなかった。
三本先の骨が、初めて文句を言った。
『何故折れない』
そんな骨を横目に、折れなかった骨は言った。
『何故横に習って折れなければならない』
続く骨の中に、納得するものとそうでないものがいた。
そのうち、折れない事が良い事と考える骨が増え、傘はたたむ事ができなくなった。
折れない骨が増えた傘。
結局、引っ張られた布の一部が破けてしまった。
それは、ゴミとして捨てられてしまった。
何年も何十年も何百年も経って、土の深くからその傘は発見され、世紀の発見とされた。
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