僕が君にできること
「ねぇ~!ヤバくない湯川旬!」


デスクにおもむろに広げられた雑誌にはシャツをはだけ誘うような目をした奴が写っていた。


『おいで。抱きしめてあげる』
ページに書かれた文字に漫画で涙するテテがダブった。


「ブッ…」吹き出してしまった。


「何で?この湯川旬のどこに笑いの要素があるの?」
咲子が不機嫌そうに言った。


「あ!ごめん違うこと考えてた。確かにね…いい男だね」
とりあえず話を合わせる。


「でしょ~。ドラマもいいよね~。でもこの様子だと伊藤美鈴と付き合う流れだよね~。キスとかやっぱするよね~。マジ悔しいんですけど」

ドラマの相手役にヤキモチを焼く同僚に申し訳ない思いになった。


2日前交わしたキス…。
子犬のようなテテを思いだし顔が熱くなってきた。

「何赤くなってんの?朋香今日おかしくない?」
咲子は隅から隅まで私を観察した。


「あ~そうですか。彼氏とラブラブなんでしょ。ごちそうさま。いいよね~理想的な彼氏がいる人は」


咲子がバカバカしいと手を振りながら自分のデスクへと戻っていこうとした。


「あ!!そうだ!」帰りかけた咲子が何かを思い出し戻ってきた。


「幸せ者にお願い!寂しい私を哀れだと思って付き合って!今日表参道で旬のドラマのロケをするんだって。生だよ生!寂しいあたしゃそれで十分だからさ~」


手を合わせる咲子を見ながら思い出した。
そうだ…ロケで謎が解けるんだった。


謎…なんだろう。


< 21 / 54 >

この作品をシェア

pagetop