僕が君にできること
「ねえ…咲子。湯川旬のこと私にも教えて…」

ランチの会話の中で思い切って言ってみた。

「うそ?!まさか朋この間の生旬見て沼にはまった?!わかるよ〜しょうがないよね湯川旬はこの世のものとは思えないオーラがあるもんね。ハマるのわかる!」

堰を切ったように咲子の話は止まらなくなり、私の知らない湯川旬を次々と教えてくれた。


湯川旬は7人のヒップホップアイドルグループに所属していて、最近欧米でも人気が出てき世界ツアーが7月から始まるらしい。

旬はその中でも人気があり、最近出たドラマも好評で俳優の仕事や単独でのCMも多くなりかなり注目を浴びている人らしい。

「まだまだあるけど休憩終わっちゃう〜今夜飲み行こうよ!まだ話し足りないんだけど〜」

食べるのを忘れて話す咲子の圧はすごい。


要するに凄い人のようだ。


「ごめん咲子。夜飲みに行きたいところだけど…ちょっと行かなきゃならないところがあって…」


パスタをフォークに巻きつけながら咲子に謝った。

「いいよ彼のいる朋にしたらね〜アイドルなんて興味程度に終わるよね。いいのいいの。私なんて旬が好きすぎてそこいらの男がみんな芋にしか見えないからね」


ため息混じりに咲子がボヤいた。


彼…隼人のことを言われるたびに罪悪感で苦しくなる。


何も取り柄のない、どこにでもいる普通の私が世界中が魅かれるような人と恋をしようといている。


まだ引き返せる。


いつもこの言葉が私に問いかける。



< 26 / 54 >

この作品をシェア

pagetop