誰にも言えない誰も信じてくれない2人の時間は密かに進んでいた。
いつもの部屋で私はいつもの時間に、秋は仕事を終えた時間に立ち寄り2人はこの極小のスペースで過ごした。


お互いに好きな本を読み、時々笑い、時々泣き、そしてキスをした。


時間は瞬きするたびに進んでいくかのようにあっという間に過ぎた。
店を出るといつものようにそれぞれべつの方向へ帰る。その繰り返し。




秋の別の姿、湯川旬はどんどん遠くの人になっていた。
CMの数は上半期1位。
映画を2本抱え、雑誌の表紙を常に飾っている。


よくここに来る時間が作れると不思議に思うくらい、多忙な日々を送っていた。
時折気がつくとベットで寝息をたてる秋。


その髪を撫でる。


この人にはもうひとつの顔がある。
手を伸ばしても届かない所にいるもうひとつの顔が。


最初から嘘なのかもしれない。


一度だって現実だと思ったことはない。


この寝息を立てた子犬のような君はきっといつか私の前から去る。
…そういつも言い聞かせる。


現実にそうなった時少しでも傷つかないため。
傷つく準備をしておく。心をえぐられる覚悟をしておく。


唇にそっと指で触れくちづけをた。



静かな時間を突き破り携帯の音が彼を目覚めさせた。

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