僕が君にできること
「そろそろ終電だね。帰ろうか。」


立ち上がり本を片付けているとテテは腕を掴んで引き寄せた。


「朋は俺と会えない時間彼と過ごすの?朋は彼にこんなふうに抱きしめられるの?」
テテは強く抱きしめてきた。


「そうだね。ちょうどいい関係なんだよ私達。日本に帰ってきたらまた会う。そんな関係で。漫画みたいな関係。異次元の関係」


寂しいなんて気づかれたくなかった。世界を相手にしている彼を引き止めちゃいけないんだ。精一杯の強がりだった。


「世界中があなたを愛してる。あなたは一人のものじゃない。それくらい私もわかっているから・・・・大丈夫」


本気になってはいけない。テテだって本気じゃないからそう思ってた。そう思おうとした。


「あれは湯川旬だって…」


「そう思いたいけど・・・・無理だよ。違いすぎる私とテテの世界は」


確かではない関係が不安でたまらなかった。
この一瞬のやり取りでせき止めていた思いが止まらなくなっていた。


「朋も…俺として見てくれてなかったの?」

テテの寂しそうな目が私を責めた。


言っちゃダメだってわかっているのに言葉が溢れた。


「立っている場所が違いすぎて…不安なの。

会えば会うほど、会えなきゃ会えないほど、テテを自分だけのものにしたいって、どんどんテテに重くのしかかりそうで…普通の女なんだよ私は」



自分からテテを突き放したことに気がつき私は部屋を出た。



テテは追いかけてこなかった。
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