僕が君にできること
そっと目を開けると薬指には繊細なラインの綺麗なリングがはめられていた。
リングを見つめる目を隼人に向けると優しく微笑んでいた。


「俺…プロになろうと思って。そうなると海外とかも行くだろうし、離れて過ごすことも多くなるだろうから。
朋をまた不安にさせんじゃないかなって。
確かなものを示したいっていうか。
要するに…そういうことだ…結婚しよ」



肝心の言葉が上ずっていて隼人らしかった。


涙が溢れてきた。
純粋な嬉しさの涙と不順な罪悪感とあの人を愛おしむ涙。


「泣くな朋。大切にするから」


そう言って隼人は私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
これで本当にさよならしよう。
隼人と幸せになろう。受け入れよう。


この人を大切にしよう。


そう言い聞かせる私の心を揺さぶるように彼が歌うCM流れた。

〜ぎゅっと掴んで 僕を抱きしめて

Can you trust me, can you trust me, can you trust me

強く抱きしめて〜


今とてもあなたに会いたいです。



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