僕が君にできること
そのキスは偽りのキス。
数分の細切れのシーンをを縫い合わせるかのような偽り。


それでちょうどよかった。



離れた唇に今度は僕から触れた。
耳を塞いでいるかのように無音の時が流れた。



「誰かのかわりでもいいよ」



柚木は鼻先を合わせようとして言った。



その言葉に触れそうな鼻先は離れまた傷が傷んだ。


「この世界は嘘で出来てるから、本当の愛は求めてないよ」



彼女の笑顔は僕と一緒だった。


もう一度鼻先を合わ唇を触れ合った。



冷たい鼻先は朋の面影を蘇らせ僕を苦しめた。


その面影を消し去ろうとキスを重ねた。




忘れようと思うほど、あの人への想いは胸に刻み込まれた。
もがけばもがくほど引き込まれ溺れていくのは、まだあなたを求めているということ。



そのキスは偽り。
あなたを想い重ねる偽りのキス。


そのキスに今は溺れてもいい…そう思った。
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