Sion

過去





それは希愛が小学5年生、11歳の時のことだ。
元々大人しめな性格だったが、素直で健気、優しい希愛の傍には常に誰かがいた。




その内の一人が律花だ。
家が割と近所で昔からよく二人で遊んでいた。




同じ年頃の子が同じ地区内に居なかったせいもあるだろう。
小学生から仲良かった二人の関係は今も続いている。




そしてもう一人、希愛が心から大切と呼べる人がいた。
―――夏川 爽(なつかわ そう)




その名のとおり、爽やかで風のような人
とても優しく、兄のような存在だった。




爽も希愛のことを妹のように可愛がり、大切にしていた。
それは家族が早くに亡くなったせいもあるかもしれない。




爽の母親は元々体が弱く、生まれてすぐに亡くなってしまった。
男手一つで育ててくれた父親は、病気で亡くなってしまった。




爽がまだ10歳の時だ。
爽の身元を引き受けたのは希愛の両親だった。
元々爽の両親とは知り合いで、まだ子供がいなかったため、希愛の家で育てることにしたのだという。




その2年後、希愛が生まれた。
二人は本当の兄妹のように育った。




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